【インタビュー】多職種連携は、地域の人を知ることから始めよう(第2回)

インタビュー

2021/02/15

歯科医師 五島朋幸 先生 ・ふれあい歯科ごとう・新宿食支援研究会 代表 ・日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授 ・日本歯科大学東京短期大学歯科衛生士科講師 ・東京医科歯科大学非常勤講師 ・慶応義塾大学非常勤講師

 

「新宿食支援研究会」(通称、新食研)という団体をご存知だろうか?
多職種連携が必要と言われて久しいが、実践できている方はまだまだ多くは無いと思われる。「新宿食支援研究会」は23職種160名が所属し、東京・新宿にて地域食支援・多職種連携を実践しているプロフェッショナル集団。課題ごとに設けられた数人規模のワーキンググループが有機的に活動しながら、日々「最期まで口から食べる」ために何ができるかを追求している。全国でも有数の団体であり、他の食支援・多職種連携グループとの連携も深めている。
代表である歯科医師 五島朋幸先生に、食支援・多職種連携に取り組まれた経緯やポイントを聞いた。

 

■MTK&H®による「最期まで口から食べられる街」づくり —— 多職種の方々は、具体的にどのような役割を果たされるのでしょうか?

私は、食支援には具体的に以下が必要だと考えます。 1. 全身の管理 2. 栄養管理 3. 口腔環境整備(義歯製作、調整) 4. 口腔ケア 5. 摂食、嚥下リハビリ 6. 食事形態の調整 7. 食事作り 8. 食事姿勢の調整 9. 食事介助 10. 食事環境調整 各専門職がそれぞれの役割りを担いますが、全てに関与できる専門職はいません。だからこそ地域の中では、多くの職種が関わって食支援をする必要があります。これが地域食支援だと思います。そこでは、誰が、誰に対して、何をするのか?がとても重要となります。
老年人口や摂食嚥下障害の発症率から算出すると、新宿区内で食支援を必要とする摂食嚥下障害の高齢者数は10,000人以上と推測されます。各専門職が一人ずつ対応するのは大事ですが、それだけではとても地域の問題を解決できません。
そのため新宿食支援研究会では、「最期まで口から食べられる街、新宿」をモットーに、専門職だけでなく地域社会も含めて、 ・何らかの食や栄養の異常を「見つける人」=M ・適切な支援者に「つなぐ人」=T ・「結果を出す人(支援者)」=K を、地域で無限に作り出すことを目的としています。
そうすることで、例えば、むせ込みが激しい人は、調理の工夫で最期まで食べられるようになるかもしれません。痩せてきた、食欲がない方は、家族がサポートすることでケアができるかもしれません。そんな街づくりをしていきたいです。
そしてさらに専門職にとって必要なことは、その活動を「広める」=Hことです。 MTKを実践するための知識や意識を、専門職が社会に広める。つまり社会教育をしていくことが重要なのです。
新宿食支援研究会では「MTK&H®」(見つける、つなぐ、結果を出す、そして広める)として商標も取得して活動をしています。

■介護職の気づきが起点となる —— 新宿食支援研究会の「多職種連携」において、重視されているポイントはございますか?

設立当初からの方針ですが、介護職の気づきを起点とした多職種連携・食支援を心がけています。他地域でも多職種による食支援活動を行っている先はありますが、その多くは医療職が中心となっています。ただ本来は、地域で食支援活動を実施するためには、地域からニーズがあがってくる必要があると思います。医科歯科連携だけでは地域に広がらないのです。「見つける(=M)」という視点からはケアマネージャーやヘルパーの存在は必要不可欠です。
また、一般の方も巻き込んでの街づくりを実践しています。
例えば、専門職だけでなく地域住民にも広く知ってもらうために、「タベマチ祭り」というイベントなどを開催しています。餅つきを筆頭に子ども食堂、介護商品試食会、パンの販売など食べるイベントはもちろん、ボクシングのミット打ちやランニングなど、多くの地域の方にご参加いただきました。

■新宿食支援研究会の取り組み・ノウハウを全国に知ってもらうために —— 今後の展開はどのようにお考えでしょうか?

Withコロナ時代でリアルな場での集まりが難しくなってきましたが、その分、Webを活用して地域の垣根を越えた展開もできるようになってきました。 今後は、新宿での活動を強固にしていくと同時に、全国に食支援を広げていく活動も積極的に実施していきたいと思います。
多職種連携を始めるには、地域で働いている人を見ることが第一歩であり、とても重要です。院内にいるだけでは見えないものが、地域にはあるはずです。
だから、そのための一助となってもらえばとの思いも込めて、「多職種連携の実際を知ろう」という全10回のWebセミナーシリーズを実施しました。 講師は「新宿食支援研究会」の10職種10人の精鋭メンバーです。 シーズン1(2020年5月1日~9月2日までの10回シリーズ)が非常に好評だったため、シーズン2(2020年10月7日~)も開始しています。 実際に本セミナーに参加された方が、講師を地域にお招きしてレクチャーを依頼したり、セミナー参加者が次の講師になったり、そこからまた仲間が増えたりと、大きなシナジーが生まれています。
また、新宿食支援研究会メンバーにとっても、このような発信の場を経験することが成長につながるので、新宿という地域の底上げにもなります。
多職種連携は重要ですが、形だけの連携では意味がないと思いますし、逆に多職種がいないとできないわけでも無いです。結果的には患者さんが良くなっていれば良いわけで、できることはいくらでもあると思います。
食支援における多職種連携において歯科は主役・リーダーであるべきだと思いますが、だからこそ地域でどのような方が働いているのかを見ることが、本当の意味での多職種連携の第一歩になると思います。

【インタビュー】多職種連携は、地域の人を知ることから始めよう(第1回)

【特集】多職種連携の実際を知ろう(Season1)

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