診療側vs支払側 意見書から読み解く

令和8年度診療報酬改定

2025/12/15

令和7年12月10日、中医協において診療側・支払側の2つの意見書(令和8年度診療報酬改定に関する基本的な見解)が提出されました。
本コラムでは、診療側と支払側の双方の意見書の内容について「第25回医療経済実態調査」の結果にも触れながら、要点を解説します。

1. 支払側の視点:「歯科診療所の経営は堅調である」

支払側委員は、第25回医療経済実態調査の結果を基に、以下のように分析し、主張しています。

病院と診療所の明暗

令和6年において、「一般病院は7%程度の赤字」である一方、「医療法人の一般診療所と歯科診療所、法人の薬局は5%程度の黒字」であると指摘。

財源の再配分論

黒字を根拠に、「診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、財源配分を柔軟に見直すべき」と主張。

一律引き上げへの牽制

経営状況に格差がある以上、「基本診療料の単純な一律の引上げは妥当ではない」と釘を刺す。

「現場の苦しさを反映していない」と感じるかもしれませんが、改定の議論はこの「5%黒字」という数字をベースに進んでおります。

令和6年度において、一般病院全体の損益差額が-7.3%で赤字であるが、医療法人の一般診療所や歯科診療所、法人の保険薬局は損益差額が+5%程度の黒字である。参照:第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告_令和7年実施

2. 診療側の視点:統計に表れない「コスト増」と「人材争奪戦」

診療側の意見書では、表面上の収支差額では見えない、現場の悲鳴に近い実態を訴えています。また、骨太方針の内容にも触れ、財源を純粋に上乗せする「真水」による思い切った対応が必要と説明しました。

コントロール不能な「材料費高騰」

収入が公定価格で固定されているのに対し、支出(特に材料費)が市場価格変動の影響を受ける点を指摘。
歯科の特異性を例に「令和7年に入ってから金パラ価格が再び急騰」して、歯科材料や医療機器の価格上昇が経営を強く圧迫していると説明。
重ねて、これらは自助努力では到底対応できない状況に陥っていると、急激な物価高騰へ対応し得る大幅な改定が不可欠であると訴えた。

他産業に後れを取る「賃上げ」

2025年春闘での平均賃上げ率が5.26%等となる中、医療界の賃上げはそれに及んでいないと説明。
また、歯科衛生士等の給与水準が依然として低いことを挙げて、賃上げは「喫緊の課題」としている。
他産業への人材流出の懸念と、医療提供体制に支障が生じることを懸念。

データ上で黒字が出ていたとしても、それは「将来の設備投資や、スタッフの賃上げ原資」が、物価高によって浸食されていることが現場の実態です。

3. 共通の着地点:「医療DX」による効率化

対立する両者の主張ですが、意見が一致している重要テーマがあります。それは「医療DXの推進」「業務効率化」です。

支払側の主張

DXやICTを活用し、各職種が活躍できる「組織運営の効率化」を求める。

診療側の主張

DXは業務効率化に効果的であり推進すべき。
システム導入、維持やセキュリティ対策には多大な費用がかかるため、「十分な財源支援」を求める。

「令和8年度診療報酬改定」の議論が進んでいます。
今後の動きに注目です!

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