今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.4 地域包括ケアのメリットとは?~

特集

2023/08/20

Vol.4:「地域包括ケアのメリットとは?」

超高齢社会において、医療や介護のニーズはますます増えることが予想されています。そのような中、我が国では「地域包括ケアシステム」の構築が推進されています。「地域包括ケアシステム」って一体どのようなものなのでしょうか?なんとなく理解しているつもりだけど、詳しくは知らない・・・。そんな方も多いのではないでしょうか。 この連載記事では、「地域包括ケアシステム」の重要な担い手でもある医療従事者のみなさまに、「地域包括ケアシステム」に関する基本情報を配信してまいります。

 

地域包括ケアシステムのメリットは大きく分けて4つ

高齢者がいつまでも住み慣れた地域で生活を送れるように、地域一帯で高齢者を支えるサービスを提供する「地域包括ケアシステム」。このシステムがうまく機能した場合、高齢者やその家族などにはどのようなメリットがあるのでしょうか。>
地域包括ケアシステムの構築は、大きく分けて以下の4つのメリットが存在します。
◎高齢者が住み慣れた地域や自宅で長く生活できる
◎高齢者の家族の負担が軽減される
◎地域のニーズに合った多様なサービスが生まれる
◎高齢者の地域活動・社会参加が活発化する
以下の章では、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

 

メリット(1) 高齢者が住み慣れた地域や自宅で長く生活できる

地域包括ケアシステムが整備されると、医療機関と介護事業者の連携が進み、要介護者に対して柔軟でスピーディーな医療・介護サービスの提供が可能になります。
かつては、地域内の医療と介護の連携体制が整備されておらず、それぞれの事業者が独自にサービスを提供していました。そのため、要介護者への柔軟なサービス提供が難しく、高齢者は住み慣れた地域から離れた場所や、病院・施設などの自宅以外の場所で過ごすことを余儀なくされていたケースが多くありました。
地域包括ケアシステムの導入が進むと、医療機関と介護事業者の連携により、必要なときに必要なサービスを自宅で受けることができるようになります。

 

メリット(2) 高齢者の家族の負担が軽減される

昨今、高齢者の家族の介護疲れや介護離職は大きな問題になっています。在宅介護は介護を行う家族への負担が大きく、要介護者の状態によっては家族だけで介護を続けるのが困難なケースもあります。
地域包括ケアシステムの導入によって、手厚いサポートが受けられるようになり、要介護者の家族の負担軽減が可能です。特に近年は、地域包括ケアシステムの導入とともに、地域全体で要介護者やその家族を支えようという呼びかけが盛んに行われています。認知症に関する知識を持ち、当事者やその家族の支援を行う「認知症サポーター」の養成講座や、認知症の高齢者を介護する人たちが集まる「認知症カフェ」なども開催され、このような取り組みは今後も増えていくと予想されています。
また、2018年度から、各地域に設置されている「認知症初期集中支援チーム」が認知症患者やその家族に対して、サービスの案内や生活・介護に関するアドバイスなどのサポートを行えるようになりました。
このように、地域包括ケアシステムの導入によって、高齢者の家族の負担を軽減し、安心して高齢者を支えながら生活できるような環境の構築が進みます。

 

メリット(3) 地域のニーズに合った多様なサービスが生まれる

各地域によって、高齢者が抱える課題や、医療機関・介護施設の数、サービスを提供するスタッフの数などが大きく異なります。地域包括ケアシステムは、高齢者が抱える問題や地域課題などに応じて解決策を決めていくため、各地域に適したケアやサービスをきめ細かく提供できるようになります。
例えば、買い物や洗濯などの家事をサポートするサービスや、介護者の見守り、介護予防、24時間巡回型の訪問介護サービスなど、地域の状況に応じたサービスの提供が実際に開始されています。他にも、高齢者への住まい提供や、多世代が助け合いながら暮らせる施設の設置など、地域ごとにさまざまなサービスが生まれています。
このように、地域の高齢者のニーズを満たしたサービスの提供によって、地域住民が安心して長く暮らせる環境が実現するでしょう。

 

メリット(4) 高齢者の地域活動・社会参加が活発化する

地域包括ケアシステムでは、高齢者の社会参加を推奨し、積極的に介護予防に関するイベントや老人会、ボランティアなどの地域活動への参加を促しています。高齢者が社会との接点を増やして他者との交流を深めることで、生活の質の向上が期待できます。
また、このような社会参加は「元気な高齢者に、支援が必要な高齢者をサポートする役割を担ってもらう」という側面もあります。支援を行う高齢者は自身の社会的役割を感じ、生きがいにつながるでしょう。また、高齢者に活躍の場を与えるだけでなく、介護予防も期待できるのが大きなメリットです。

地域包括ケアシステムは、高齢者自身にも、その家族にとっても、大きなメリットがあります。期待できる効果をしっかりと把握した上で、各地域の状況に応じて構築していくことが重要です。

 

この記事の関連記事

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.6 地域包括ケア会議と歯科衛生士~

Vol.6:「地域ケア個別会議と歯科衛生士」 超高齢社会に…

Vol.6:「地域ケア個別会議と歯科衛生士」 超高齢社会に…

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.5 歯科医療の役割とは~

Vol.5:「歯科医療の役割とは」 超高齢社会において、医…

Vol.5:「歯科医療の役割とは」 超高齢社会において、医…

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.4 地域包括ケアのメリットとは?~

Vol.4:「地域包括ケアのメリットとは?」 超高齢社会に…

Vol.4:「地域包括ケアのメリットとは?」 超高齢社会に…

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.3 地域包括ケア会議とは?~

Vol.3:「地域包括ケア会議とは?」 超高齢社会において…

Vol.3:「地域包括ケア会議とは?」 超高齢社会において…

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.2 地域包括ケアシステムの5つの要素と4つの助~

Vol.2 地域包括ケアシステムの5つの要素と4つの助 超…

Vol.2 地域包括ケアシステムの5つの要素と4つの助 超…

今さら聞けない地域包括ケアシステムのこと ~Vol.1 介護保険制度と地域包括ケアシステム~

Vol.1 介護保険制度と地域包括ケアシステム 超高齢社会…

Vol.1 介護保険制度と地域包括ケアシステム 超高齢社会…

【解説】歯科オンライン診療 スタートアップガイド(第2回)

<解説者>歯科医師 長縄拓哉 先生 歯科医師(医学博士) デ…

<解説者>歯科医師 長縄拓哉 先生 歯科医師(医学博士) デ…

【解説】歯科オンライン診療 スタートアップガイド(第1回)

<解説者>歯科医師 長縄拓哉 先生 歯科医師(医学博士) デ…

<解説者>歯科医師 長縄拓哉 先生 歯科医師(医学博士) デ…

人気記事ランキング

開業歯科医が知っておくべき口腔顔面痛 -非歯原性歯痛に対し安心安全な歯科診療を提供する為に-

監修:福田謙一 先生 ・東京歯科大学 口腔健康科学講座 障害…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.7 誤嚥性肺炎について気を付けていること ~

Vol.7 誤嚥性肺炎について気を付けていること 歯科衛生…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.6 歯科医師との連携 ~

Vol.6 歯科医師との連携 歯科衛生士16年目、歯科訪問…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.5 患者さんの状態に応じた口腔ケアのポイント~

Vol.5 患者さんの状態に応じた口腔ケアのポイント 歯科…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.4 初診時に何をみてどういう書類を作るか~

Vol.4 初診時に何をみてどういう書類を作るか 歯科衛生…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.3 訪問歯科衛生士の一日の流れ~

Vol.3 訪問歯科衛生士の一日の流れ 歯科衛生士16年目…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.2 現場に持参するもの ~

Vol.2 現場に持参するもの 歯科衛生士16年目、歯科訪…

歯科訪問診療の前におさえておきたい施設基準(か強診編②役割と施設基準)

     歯科訪問診療の前におさえておきたい施設基準 「…

歯科訪問診療の前におさえておきたい施設基準(か強診編①届出歯科医院状況とメリット)

     歯科訪問診療の前におさえておきたい施設基準 「…

訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.1 外来診療との違い ~

Vol.1 外来診療との違い 歯科衛生士16年目、歯科訪問…

人気記事ランキング