訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.6 歯科医師との連携 ~
歯科訪問診療
2023/07/25

Vol.6 歯科医師との連携
歯科衛生士16年目、歯科訪問診療7年目のSATOです。歯科訪問診療の現場では、外来診療と異なる部分がたくさんあります。これから訪問診療に取り組まれる歯科衛生士さんや、新たに訪問診療の扉を叩こうと考えている歯科衛生士のみなさまに、実際の訪問診療の業務はどのようなものなのかをお伝えいたします。
どのような時、歯科医師と連携するか?
◆初診時
歯科衛生士が患者さんの自宅にお伺いする時は、まず歯科医師から連絡が入ります。歯科医師が処置を行った後に、患者さんやご家族の方から口腔ケアを希望される形で歯科衛生士に依頼が来ることが多いです。初診時にやり取りする内容はおもに次のようなものです。
患者さんの全身状態
口腔内の状態だけでなく、拒否があるか、どのような全身疾患があるかなどをやり取りします。歯科医師の書いたカルテとは別に、歯科衛生士が再度問診を行うため、その時に作った資料と共に治療計画も共有します。
キーパーソンについて
患者さんのキーパーソンが「どなたで、どのようなケアを患者さんに行っているか」について共有します。
住所などお住まいについて
家の住所や駐車場の場所なども大切な情報です。狭い道や分かりにくい場所を通らなくてはならないこともあるため、それらの細かい情報もしっかり聞いておきます。キーパーソンが不在のお宅(患者さんが一人きりの状態)へお伺いする時は特に気を付けて聞いておく必要があります。
このような情報をやり取りした上で、お伺い可能な時間を聞き、歯科衛生士の枠で予約を入れてもらいます。歯科医師が並行して診察を行いながら歯科衛生士がケアを行うパターンと、歯科衛生士がケアのみで単独でお伺いするパターンの2つに分けられます。
◆口腔内の状況の変化があった時
患者さんの口腔内は常に変化しているため、何か変化があれば歯科医師と連携します。例えば、脱離が起こった時、新しいう蝕を見つけた時、歯が脱落してしまった時などです。口腔ケアのみを希望されている患者さんでも、3ヶ月に1度は歯科医師が患者さんの自宅にお伺いしていますが、急を要することが起こった時は歯科医師と連携し、歯科医師の診察をお願いいすることになります。 治療が終われば、また歯科衛生士が単独でお伺いしケアを行います。
歯科医師との連携で使うツール
◆電話やメール
歯科医師との連携が必要な時に多く使うのは電話やメールです。事務所全体で共有しているものと、担当の歯科医師、歯科衛生士だけでやり取りしている個々のスレッドを使い分けて連絡しています。その場で連絡することもあれば、帰社後に連絡する時もあります。コーディネーターが電話を持っているので、コーディネーターに取り次いでもらい、予約を入れるなどの対応をします。
◆連絡用紙
どのようなことで連絡したのか分かるように、歯科医師との連絡用紙にも記入します。これは読んでもらうまでに時間がかかるため、電話やメールの補助のような位置づけになります。
歯科医師との連携で気を付けること
◆患者さんの気持ちを正確に伝える
「どの部位がどのように問題なのか」を歯科医師に正確に伝えることが大切です。また、特に気を付けている点は、患者さんの希望をきちんと歯科医師に伝えることです。患者さんからすると、治療で大人数でお伺いする歯科医師よりも、1人で伺って世間話をする歯科衛生士の方が問題を伝えやすいケースがあります。例えば、義歯をどうしても付けたくない、治療を怖いと感じているなど心理的な部分は特に重要で、なるべく細かく伝えるようにしています。
◆顔を合わせることが少ないこそ
普段、私の勤めている事務所では歯科医師と歯科衛生士は顔を合わせることが少ないです。患者さんのお伺いの時間帯のずれなどで、出勤時間が違うためです。直接会うことが少ないからこそ、なるべく正確に状態を伝える必要があります。
◆鍵はコーディネーター
歯科医師との連携で鍵となるのはコーディネーターです。予約時間や患者さんの状態、歯科医師への説明などは全てコーディネーターが行ってくれます。歯科衛生士とコーディネーターは普段からなるべく連絡を取り合い、状況を共有しておく必要があります。コーディネーターとは、患者さんの状態だけでなく、どの時間に他のサービスが入っているかなども細かくやり取りしています。世間話のような内容でも、共有しておくと役に立つことがたくさんあります。
訪問歯科診療での口腔ケアにおいて、歯科医師との連携は重要です。外来診療と違い、診療室で直接やり取りすることがないため、電話やメール、連絡用紙などを使って細かく連絡します。患者さんは、歯科衛生士になら話しやすいと思っていらっしゃることもあります。歯科衛生士だからこそ得られた情報を、しっかりと歯科医師に共有することで、より良い訪問診療につながります。そのような部分も、訪問歯科衛生士の仕事のやりがいです。
※本記事の内容はあくまで一例です。
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