訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.3 訪問歯科衛生士の一日の流れ~
歯科訪問診療
2023/05/15

Vol.3 訪問歯科衛生士の一日の流れ
歯科衛生士16年目、歯科訪問診療7年目のSATOです。歯科訪問診療の現場では、外来診療と異なる部分がたくさんあります。これから訪問診療に取り組まれる歯科衛生士さんや、新たに訪問診療の扉を叩こうと考えている歯科衛生士のみなさまに、実際の訪問診療の業務はどのようなものなのかをお伝えいたします。
朝は8時15~30分前後に出社し、準備を始める
◆出社
朝は8時15~30分前後に出社します。患者さんのアポイントの状況によっても違うため、前後することもあります。また、歯科助手さんやコーディネーターさんの中にはこれより早く出社する方もいます。
◆準備
歯科衛生士が行う準備は、主に「機材の準備」「車の準備」「カルテの準備」「お金」に分けられます。機材の準備では消耗品(口腔ケア用品など)の補充がメインです。機材が破損している場合は、新しいものと入れ替えます。車は基本的に前日にガソリンを入れて準備をすませておきます。カルテの準備も前日に行っておくことがほとんどです。訪問診療では、移動する車の駐車場代がかかるため、必要なお金の準備を当日に行います。機材、車のキー、カルテ、事務の方が用意してくれたお財布を持って診療に向かいます。
診療は1時間あたり1人~3人
◆午前の診療時間は9時~12時頃まで
診療が始まる時間は、一番早い患者さんでも9時以降となります。ただ、もし遠い場所にお住まいの方が一番最初の患者さんの場合、朝は8時15分より早く出社する必要があります。午前中を遠方から始めるのか、近い場所から始めるのかによって異なります。しかし歯科医師たちの診療チームと違い、歯科衛生士は毎週同じ患者さんのところへ行く形になっているため、当日に突然早く出なくてはならないということはありません。午前の診療では、1時間あたり1人のペースで診療に伺います。施設だと移動がないため、1時間あたり3人の患者さんの診療に伺うこともあります。
◆お昼休憩は一時間程度
お昼は各自で摂ります。場所はファミリーレストラン、喫茶店、コンビニなどです。事務作業を行うこともありますが、寒い季節や暑い季節は特に、車の中にいると体力を消耗するため、建物内でしっかり身体を休めるのが理想です。
◆午後の診療時間は13時~17時30時頃まで
お昼休憩が終わったら午後の診療となります。午前と同じで、1時間あたり1人のペース、施設だと1時間に3人のペースで診療に伺います。診療が終わって帰社すると、大体18時~18時30分頃になります。
◆渋滞など、交通状況の影響によって到着時間が前後することも
車を運転して患者さん宅へ向かうため、渋滞によってどうしても時間が前後しがちになります。上手く抜けられる道が毎回あるわけではないので、到着時間は目安としてお知らせしているケースもあります。遅れる時は電話をしますが、患者さんの方でも車の運転に気を遣って下さる方が多く「遅れてもいいから気を付けてきてくださいね」と言われることがほとんどです。
◆救急の患者さんには迅速に対応
訪問車は救急の患者さんも受け付けています。予約が入れば、一番向かいやすい訪問車が患者さんの所へ向かいますが、前後の患者さんに時間変更をしていただく必要が生じることもあります。
帰社後は機材の消毒や使い捨て用品の補充などを行う
◆後片付け
帰社後は使った機材の消毒、使い捨て用品の補充、お財布のチェックと戻し、日報の提出などを行います。また、歯科助手さんは印象採得したものに石膏をつぐ作業や、細かい機材のメンテなどがありますが、歯科衛生士にはそのような作業はほとんどありません。月に一度、月末に実地指導用紙の提出がありますが、毎週行う事務的な作業としては、カルテの準備、金銭の管理に関する書類の記入をするだけのことが多いです。
◆退社
18時30分~19時頃に退社します。一日としては長いのですが、患者さんと患者さんの合間に休むことができるため、あまり時間的な負担は感じません。
長いお付き合いの患者さんとは絆も生まれる
訪問診療は、外来診療のように常に院内にいるわけではありません。そのため、やはり何が大変かと言うと、暑い時、寒い時に体力を消耗することです。また、運転する距離が長いと腰痛を起こす歯科衛生士もいます。運転で気を抜くわけにもいかないので、とにかく体力を温存し、体に気を付けて仕事をしている歯科衛生士が多いのではないでしょうか。 ただ、患者さんのケアを楽しいと感じている歯科衛生士も多いため、仕事自体を負担だと感じることは少ないかもしれません。 また、長くお伺いしていると患者さんとの絆が生まれてきます。「今週〇〇さんの歯はどうかな、どうしているかな」と思いながら、仕事に行くことが増えていきます。
外来診療と異なる部分が多いため、慣れるまで大変ではありますが、患者さんの体調の変化をしっかり観察しながら、口腔ケアを通じて患者さんの健康を支えるところに、訪問歯科衛生士の大きな魅力があると思います。
※本記事の内容はあくまで一例です。
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