訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.2 現場に持参するもの ~
歯科訪問診療
2023/04/20

Vol.2 現場に持参するもの
歯科衛生士16年目、歯科訪問診療7年目のSATOです。歯科訪問診療の現場では、外来診療と異なる部分がたくさんあります。これから訪問診療に取り組まれる歯科衛生士さんや、新たに訪問診療の扉を叩こうと考えている歯科衛生士のみなさまに、実際の訪問診療の業務はどのようなものなのかをお伝えいたします。
移動が伴うため、持ち物は必要最低限で
私が口腔ケアで患者さんを訪問する時は、手提げのついているプラスチックケースに必要なものを入れていきます。子供のランドセル程度の容量のものです。これは口腔ケアに必要なものだけ詰めているからで、治療班はもっと荷物が多いです。大きめの台車を使っている班もあります。
使い捨てのもの
持参するものは圧倒的に使い捨てのものが多いです。使い捨てのものは、使用後ゴミ袋に入れ、帰院後医療廃棄物として廃棄します。
◆グローブ
一人で様々な作業をするため、触るものに合わせて替えられるよう、グローブは多めに持っていきます。訪問診療では外来診療に比べてグローブを使う枚数も多くなります。
◆マスク
通常の紙マスクと、アイシールドがついたものの両方を持ち歩いています。コロナ禍の時は施設全体がアイシールド付きのマスクになったこともありました。お互いにお顔が見えにくくならないためにも、基本的には通常の紙マスクを使用しています。
◆紙コップ
紙コップはうがい以外にも歯ブラシを洗う水をためたり、ガーグルベース代わりにしたりと、よく使います。
◆エプロン
基本的に患者さんにはエプロンをつけてもらいますが、エプロンが嫌だという患者さんが意外に多いです。ご家族がタオルを用意してくださってることもあり、エプロンをつけるではないこともあります。
◆トレー
トレーは紙トレーを使用します。大きさは一般の外来診療で使用するものと変わりません。
◆ガーゼ
患者さんのお口の中を清拭するためのガーゼです。市販のものもあるのですが、サイズが大きいものが多いため、歯科用のガーゼを滅菌水に浸して絞り、清拭に使用しています。
◆ゴミ袋
手提げがついているタイプのゴミ袋、スーパーなどにある長方形のゴミ袋どちらも持ち歩いています。
◆スポンジブラシ
スポンジブラシは口腔内の唾液を吸い取ったり、舌ブラシ代わりにしたり、保湿ジェルの塗布に使ったりと、登場回数の多い器具です。40本くらい持ち歩いています。
◆ティッシュペーパー
歯ブラシなどの器具や、患者さんのお口の周りを拭くために使います。
消毒、滅菌して使用するもの
滅菌、消毒が必要なものはその場でアルコール消毒して使ったり、帰院後に滅菌して再度使用します。
◆ガーグルベース
うがいを行った後に吐き出すガーグルベースは大きいため、基本的に1つしか持ち歩いていません。その場でアルコール消毒、滅菌水による消毒をしますが、紙コップに吐き出せる方には紙コップで代用しています。
◆保湿ジェル
患者さんの好みに合わせて3種類程度の保湿ジェルを持ち歩いています。色々試してみると、味やテクスチャがかなり違います。味がよく(梅が人気)、柔らかすぎず、固すぎないテクスチャのものが人気です。
◆ライト
暗めのお部屋では自分でライトを照らす必要があるため、持ち歩いています。
◆滅菌水やうがい薬
一度患者さんのお口の中を清掃した歯ブラシなどは、滅菌水やうがい薬で洗って汚れを落とします。
◆ワセリン
唇が乾燥している方、口角が切れそうな方に使用します。
◆消毒用アルコール
大きなボトルは車に積み、訪問セットの中には小さなアトマイザーに小分けにして入れています。
◆ミラーやピンセット
ミラー、ピンセットも使用しますが、歯科衛生士の単独での訪問では登場しないこともあります。ただ、乾燥痰を取り除く時はピンセットが必須です。
患者さんのご自宅に置くもの
普段のケアに必要な歯ブラシ類は患者さんのご自宅に置かせていただいています。古くなってきたなと思ったら、タイミングをみて新しいものに替えます。
◆歯ブラシ
柔らかめ、普通、硬め、毛先が細いもの、などの種類があります。全て持ち歩いていて、口腔内の状態によって、必要であれば出して使います。
◆歯間ブラシ
歯間ブラシも様々なサイズをすべて持ち歩いています。
◆舌ブラシ
舌ブラシは訪問の口腔ケアではよく使います。ご家族様に使い方を聞かれることが多いのも舌ブラシです。
◆ワンタフト
訪問診療では喪失歯の方が多いため、側面を磨くためにもワンタフトは必須です。また、口腔内が見にくい状況では、目視の邪魔になりにくい、頭の小さいブラシが重宝します。
訪問歯科衛生士も診療に同行することはありますが、私は口腔ケアをメインで行っているため、これらのような訪問セットを持ち歩いています。訪問診療では限られた持ち物で対応しなくてはなりません。そのため現場では「なにか良い方法はないか……」と頭をひねることもあります。それが面白いところだとも言えるかもしれません。この連載記事では、引き続きみなさまの参考になる情報をお届けしてまいります。
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