訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.4 初診時に何をみてどういう書類を作るか~

歯科訪問診療

2023/06/05

Vol.4 初診時に何をみてどういう書類を作るか

歯科衛生士16年目、歯科訪問診療7年目のSATOです。歯科訪問診療の現場では、外来診療と異なる部分がたくさんあります。これから訪問診療に取り組まれる歯科衛生士さんや、新たに訪問診療の扉を叩こうと考えている歯科衛生士のみなさまに、実際の訪問診療の業務はどのようなものなのかをお伝えいたします。

 

初診時は歯科衛生士の診療用ファイルを作る

はじめての患者さんのお宅に伺う時は、歯科衛生士の診療用ファイルを作っています。すでに歯科医師が作ったカルテのコピーや他職種とのやり取りに必要な用紙などをいれています。診療用ファイルの中に入っているものは、主に以下になります。  

 

◆お名前、ご住所などを記載したもの

お名前、ご住所、ご年齢などを記載した紙を一番上に入れます。外来診療と違うところは、キーパーソンや連携しているデイサービスの施設、ケアマネジャーさんの連絡先が記載されている点です。

 

◆施設との連絡用紙

歯科衛生士が口腔ケアで入る時は、担当ケアマネジャーさんがいらっしゃる施設にご連絡します。専用の用紙に記入してファックスで送ります。

 

◆歯科医師との伝達用紙

問診票は記入後、コピーして歯科医師と共有します。その後、患者さんについて気になる点があれば、伝達用紙に記入してやり取りを行います。実際は、急ぎのことも多く紙では間に合わないため、メールや電話でのやり取りになることがほとんどです。記入した紙は記録として残します。

 

◆歯科衛生士実地指導用紙

日付や患者さんの状態、指導内容などを記入します。また、実地指導用紙は写しを1枚とり、患者さんのお宅にも置かせていただいています。ケアマネジャーさんや歯科医師が訪れた時に、行っているケアの内容を共有するためです。

 

初診時の主な問診内容と、特に気を付けているところ

歯科医師が記載した問診票もありますが、歯科衛生士も初診時に問診を行います。初診時にはさまざまなことをお聞きします。問診票の内容は以下になります。

 

◆基本的な歯式

歯科医師も歯式をとりますが、歯科衛生士も重ねて歯式をとります。

 

◆全身状態、生活状態についての確認

全身疾患、座位の可・不可、首の動き、生活の自立度、食事の状態(きざみやとろみなど)などについてお伺いします。

 

◆ご自分での口腔清掃、口腔管理の可・不可

ブラッシング指導を行うこともあるので、ご自分で歯磨きが行えるかについてお伺いします。また、うがいができるかについても最初にお伺いします。うがいは口腔機能の状態をはかる良い指針になります。その他、義歯の着脱がご自分でできるかについてもお聞きします。

 

◆口腔清掃状態

口腔清掃がきちんと行われているかについて確認します。

 

◆嚥下の状態

唾液を飲み込む動作をしてもらい、嚥下の状態を確認します。

 

◆唾液の状態

粘度や量によって3段階に分かれています(RDテスト)。

 

◆喀出力

咳をしていただき、喀出力を確認します。私は特にこれができるかできないか、強いかどうかで、うがいを自分で行っていただくかどうか決めています。

 

◆唇や舌の動き

パタカラなどの発音しにくい文字を言っていただき、発音の状態を確認します。

 

◆発音

唇をすぼめていただく、舌を前に出していただく、ティッシュペーパーに息を吹きかけていただくなどして、口腔全体の動きを確認します。

 

◆今後行う指導についての記載

今後行っていく指導内容について記載します。ご自分で磨ける方はブラッシング指導を続けていく、お話ができる方は五十音を言っていただくなど、その方の状態に合わせて口腔ケアの計画を立てます。実際は、上記のような動作を行うことのできない患者さんも多くいらっしゃるため、キーパーソンの方に対するご相談などがケアの計画となることもあります。

 

◆特に気を付けているところ

さまざまな問診の中で、口腔清掃状態がどうか?というのは大きなチェックポイントです。私の経験則になりますが、口腔ケアを希望される方というのは、普段とてもきれいにしていて、さらにプロのアドバイスを受けたい方と、口腔ケアまで手が回らないから歯科衛生士を頼むという方の2パターンが多いように思います。前者の場合、患者さんは何も問題がないのですが、後者の場合、患者さんは初診時にケアを行った時に、今までの汚れが一時的に、全て口腔内に広がることになります。きちんとふき取る、うがいをするなどしないと誤嚥性肺炎の引き金になってしまうため、十分な注意が必要です。

訪問歯科診療の歯科衛生士は、初診時にさまざまな書類を作り、さまざまなポイントから、患者さんの様子を把握し、口腔ケアなどを行っていきます。初めての患者さんのところに伺う時は緊張しますが、定期的なケアをさせていただく、長いお付き合いになる方との出会いでもあります。

 

※本記事の内容はあくまで一例です。

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