開業歯科医が知っておくべき口腔顔面痛 -非歯原性歯痛に対し安心安全な歯科診療を提供する為に-

歯科臨床一般

2022/11/10

監修:福田謙一 先生
・東京歯科大学 口腔健康科学講座 障害者歯科・口腔顔面痛研究室 教授
・東京歯科大学水道橋病院スペシャルニーズ歯科・ペインクリニック科 科長


 


《目次》
1.非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1~9%を占めると推定
2.不要な抜髄や抜歯を行い、トラブルを招くケースも
3.非歯原性歯痛(筋・筋膜性歯痛)の診断ポイント
4.顎の痛みや舌痛など、近年問題視される口腔顔面痛


 


1.非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1%~9%を占めると推定


歯科を訪れる患者さんは、痛みを主訴とすることが多いと思います。その多くの痛みは、歯髄炎、歯周炎、歯牙破折などの器質的疾患が起因しており、部位さえ特定できれば、その診断は比較的容易です。また、その原因を除去することによって容易に除痛することができます。


しかしながら、視覚的にもX線的にも痛みの原因を認識できず、困惑したという御経験がおありではないでしょうか。また、「抜髄後、患者さんが執拗な痛みを訴えているにもかかわらず、原因がよくわからない」「抜歯後の抜歯窩の治癒は良好にもかかわらず、患者さんが痛みを訴える」「補綴物を入れたらよくわからない痛みを訴え始めた」といった御経験がおありではないでしょうか。


このような痛みの多くが、歯そのものに原因が存在しない非歯原性歯痛と呼ばれる病態です。病名ではありませんが、口腔顔面痛の代表的な病態用語として、近年広く知られるようになってきました。ある統計によると、非歯原性歯痛は歯痛全体の2.1~9%を占めると推定されています(※1-2)。


 


2.不要な抜髄や抜歯を行い、トラブルを招くケースも


非歯原性歯痛に代表される口腔顔面痛は、従来の大学教育では言及されることがなかった新しい領域です。開業歯科医師にとっては、診断・対応が難しい疾患のひとつです。


例えば...

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