「歯援診」の届出を理解する(在宅療養支援歯科診療所)#02

施設基準

2025/09/25

このコラムでは、施設基準「在宅療養支援歯科診療所(以下、「歯援診」と表記します。)」の届出について、整理してお伝えします。


届出要件を知ろう!

それでは、「歯援診」の届出を進める上で、どのような準備が必要なのか、みていきましょう。

(1)在宅療養支援歯科診療所1の施設基準


次のいずれにも該当し、在宅等の療養に関して歯科医療面から支援できる体制等を確保していること。


(ア) 過去1年間に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療料3を合計 18 回以上算定していること。


(イ) 高齢者の心身の特性(認知症に関する内容を含むものであること。)、口腔機能の管理、緊急時対応等に係る適切な研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。


(ウ) 歯科衛生士が配置されていること。


(エ) 当該診療所において、歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な保険医をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。


(オ) 歯科訪問診療に係る後方支援の機能を有する別の保険医療機関との連携体制が確保されていること。


(カ) 当該診療所において、過去1年間の在宅医療を担う他の保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療料の算定回数の実績が5回以上であること。


(キ) 以下のいずれかに該当すること。

(イ) 当該地域において、地域ケア会議、在宅医療・介護に関するサービス担当者会議又は病院・診療所・介護保険施設等が実施する多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。

(ロ) 過去1年間に、病院・診療所・介護保険施設等の職員への口腔管理に関する技術的助言や研修等の実施又は口腔管理への協力を行っていること。

(ハ) 歯科訪問診療に関する他の歯科医療機関との連携実績が年1回以上あること


(ク) 過去1年間に、以下のいずれかの算定が1つ以上あること。

(イ) 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の算定があること。

(ロ) 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の算定があること。

(ハ) 退院時共同指導料1、在宅歯科医療連携加算1、在宅歯科医療連携加算2、小児在宅歯科医療連携加算1、小児在宅歯科医療連携加算2、在宅歯科医療情報連携加算、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料の算定があること。


(ケ) 直近1か月に歯科訪問診療及び外来で歯科診療を行った患者のうち、歯科訪問診療を行った患者数の割合が9割5分以上の診療所にあっては、次のいずれにも該当するものであること。

(イ) 過去1年間に、5か所以上の保険医療機関から初診患者の診療情報提供を受けていること。

(ロ) 直近3か月に当該診療所で行われた歯科訪問診療のうち、6割以上が歯科訪問診療1を算定していること。

(ハ) 在宅歯科医療に係る3年以上の経験を有する歯科医師が勤務していること。

(ニ) 歯科用ポータブルユニット、歯科用ポータブルバキューム及び歯科用ポータブルレントゲンを有していること。

(ホ) 歯科訪問診療において、過去1年間の診療実績(歯科点数表に掲げるのうち、次に掲げるものの算定実績をいう。)が次の要件のいずれにも該当していること。

① 「I005」に掲げる抜髄及び「I006」に掲げる感染根管処置の算定実績が合わせて 20 回以上であること。

② 「J000」に掲げる抜歯手術の算定実績が 20 回以上であること。

③ 「M018」に掲げる有床義歯を新製した回数、「M029」に掲げる有床義歯修理及び「M030」に掲げる有床義歯内面適合法の算定実績が合わせて 40 回以上であること。ただし、それぞれの算定実績は5回以上であること。


(コ) 年に1回、歯科訪問診療の患者数等を別添2の様式 18 の2を用いて、地方厚生(支)局長に報告していること。

 

(2)在宅療養支援歯科診療所2の施設基準


次のいずれにも該当し、在宅等の療養に関して歯科医療面から支援できる体制等を確保していること。


(ア) 過去1年間に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療3を合計4回以上算定していること。


(イ) (1)のイからオまで及びケのいずれにも該当すること。


(ウ) 当該診療所において、過去1年間の在宅医療を担う他の保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療料の算定回数の実績が3回以上であること。


(エ) 年に1回、歯科訪問診療の患者数等を別添2の様式 18 の2を用いて、地方厚生(支)局長に報告していること。

 

 

2. 届出に関する事項


在宅療養支援歯科診療所1及び在宅療養支援歯科診療所2の施設基準に係る届出は、別添2の様式 18 を用いること。

「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」

保医発0305第6号(令和6年3月5日)


届出にはどの書類が必要?

「歯援診」の届出には、共通した2つの書類が必要です。

「歯援診2」の場合は、様式18の「7」の記載は不要です。


用意する届出書類


・別添2「特掲診療料の施設基準に係る届出書

・様式18「在宅療養支援歯科診療所1又は2の施設基準に係る届出書添付書類


「歯援診1」の届出には別添2と様式18が必要

「歯援診2」の届出には別添2と様式18が必要

※推奨※

届出書類を印刷・提出の際は、「片面印刷」

研修の「修了証」コピーを書類に添付

記載した別添2様式18をクリップで留めて提出


 ▼「歯援診」の届出書類ダウンロードリンク(厚生局別)▼

厚生局ごとに記載が異なる場合がありますので、該当のものを選択してください。

【北海道厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【東北厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【関東信越厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【東海北陸厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【近畿厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【中国四国厚生局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【四国厚生支局】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18


【九州厚生局・沖縄麻薬取締支所】

|歯援診1|(別添2 様式18)   |歯援診2|(別添2 様式18



▼こちらは「歯援診1・2」の届出に必要な研修内容を満たしています▼

令和6年度診療報酬改定対応 歯科施設基準研修会のご案内



FAQ(Q&A)

Q 届出を行いました。いつから算定できますか?


各月の末日までに届出を受理した場合は、翌月1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。

また、月の最初の開庁日に届出を受理した場合には、当該月の1日から算定が可能です。

※厚生局によっては、別途、申請締切日を設けている場合があります。詳細は各厚生局のHPをご確認ください。

※重要※

従来の届出受理通知の送付廃止が決定されました。今後は、各厚生局のHPへの掲載のみに切替わります(令和7年度中予定)。ご留意ください。


Q 歯科医院のホームページが無いため、ウェブへの掲載ができません。どうしたら良いですか?


自院のホームページが無い場合は、掲載する必要はありません。

しかし、その場合であっても、届け出た事項を院内掲示する必要があります。自院で所有するホームページがある場合は、院内掲示の他にウェブ掲載も必要となります。「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について,厚生労働省保険局医療課長,厚生労働省保険局歯科医療管理官,保医発0327第10号(令和6年3月27日)

※自院で所有するホームページがある場合は、【院内掲示】と【ウェブ掲載】が必要です。


Q 令和6年度診療報酬改定で、「歯援診」の施設基準に変更はありましたか?


届出要件に一部変更がありました。

《変更箇所(抜粋)》

(1) 在宅療養支援歯科診療所1の施設基準


ア 過去1年間に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療料3を合計18回以上算定していること。

▶歯科訪問診療料の区分が細分化されたことによる変更


キ 以下のいずれかに該当すること。

(イ) 当該地域において、地域ケア会議、在宅医療・介護に関するサービス担当者会議又は病院・診療所・介護保険施設等実施する多職種連携に係る会議に年1回以上出席していること。

▶会議の実施主体が明確化

(ロ) 過去1年間に、病院・診療所・介護保険施設等の職員への口腔管理に関する技術的助言や研修等の実施又は口腔管理への協力を行っていること。

(ハ) (略)


ク 過去1年間に、以下のいずれかの算定が1つ以上あること。

(イ) 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の算定があること。

▶栄養サポートチーム等連携加算の廃止、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の新設に伴う変更

(ロ) 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の算定があること。

(ハ) 退院時共同指導料1、在宅歯科医療連携加算1、在宅歯科医療連携加算2、小児在宅歯科医療連携加算1、小児在宅歯科医療連携加算2、在宅歯科医療情報連携加算、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料の算定があること。

▶新設の加算の追加


(2) 在宅療養支援歯科診療所2の施設基準


ア 過去1年間に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療3を合計4回以上算定していること。


イ  (1)のイからまで及びケのいずれにも該当すること。


当該診療所において、過去1年間の在宅医療を担う他の保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療料の算定回数の実績が回以上であること。

実績回数の緩和(5→3)



▼こちらは「歯援診1・2」の届出に必要な研修内容を満たしています▼

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関連する疑義解釈

Q 在宅療養支援歯科診療所1及び在宅療養支援歯科診療2の施設基準において、在宅医療を担う他の保険医療機関、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療の実績が5回以上必要となっているが、「等」の中に他の歯科医療機関からの依頼も含まれるか。


含まれる。

ただし、5回以上の実績のうち1回以上、他の歯科医療機関以外の保険医療機関又は施設等からの依頼があること。なお、全て歯科医療機関からの依頼による場合は認められない。

「疑義解釈資料の送付について(その1)」

厚生労働省保険局医療課,事務連絡(平成30年3月30日)


Q 初診料の注1、地域歯科診療支援病院歯科初診料、歯科外来診療医療安全対策加算1、歯科外来診療医療安全対策加算2、歯科外来診療感染対策加算1、歯科点数表の初診料の注16、再診料の注12、小児口腔機能管理料の注3に規定する口腔管理体制強化加算、在宅療養支援歯科診療所及び在宅療養支援歯科病院の施設基準に規定する各研修について、オンライン会議システムやWEB 配信を含むe-learning 形式等を活用し、研修を実施することは可能か。


→可能。ただし、オンライン会議システムやe-learning 形式等を活用して研修を実施する場合は、出席状況の確認、研修時間の確保、受講者からの質問への対応、研修内容の理解度の確認等が行えるような形式で実施すること。


例えば、
・ オンライン会議システムを活用する場合、受講者は原則としてカメラをオンにし、主催者が出席状況を確認できるようにする。
・ e-learning 形式の場合、主催者が、受講者の学習時間、進捗状況を含め受講前後のテスト等の実施により研修の完了を把握する。
・ 受講者からの質問等について、オンライン会議システムの場合は、チャットシステムや音声発信を用いることや、e-learning 形式の場合は、別途質問を受け付け、回答できるような運用を行い、必要に応じ質問・回答について研修会のWeb ページに掲載する。
などが考えられる。

「疑義解釈資料の送付について(その4)」

厚生労働省保険局医療課,事務連絡(令和6年5月10日)


▼こちらは「歯援診1・2」の届出に必要な研修内容を満たしています▼

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「歯援診」の施設基準は、平成20年度に創設されていますが、全国的にまだ届出している医院が少ない施設基準です。そのため、他院との差別化を図るために、「歯援診」の届出は有効であると考えます。


中でも、「歯援診2」は比較的ハードルが低い施設基準のため、<これから訪問診療に力を入れていきたい歯科医院>におすすめです!

(近年の診療報酬改定では「歯援診2」の要件が緩和している傾向にあります。)


最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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