令和8年度診療報酬改定における施設基準「歯援診」の変更点を押さえよう!

施設基準

2026/07/14


歯科医院の地域貢献と経営の安定化、そして他院との差別化において重要な役割を果たす施設基準「在宅療養支援歯科診療所(歯援診)」。
令和8年度診療報酬改定では、在宅歯科医療のさらなる充実と実態に即した評価を行うため、その施設基準に非常に大きな見直しが行われました。

これまでの令和6年度改定での要件から何が変わり、これから届出する医院、あるいは既に届出している医院は今後どのような対応が必要になるのでしょうか。
本コラムでは、変更箇所を中心に最新の「歯援診(歯援診1・歯援診2)」の施設基準をみていきます。

1. 診療報酬改定で「歯援診」の何が変わった?

まず初めに、今回の改定で「歯援診」の施設基準に関わる要件の変更箇所を整理していきます。

① 歯援診1の実績要件が「直近1か月ベース」へ変更・多様化

→令和6年度改定までは「過去1年間に…合計18回以上算定」という年間ベースの実績が求められていましたが、今回の改定からは直近1か月を基準とした要件へと変更されました。さらに、満たすべき実績の選択肢が4つに拡充されています。

令和6年度診療報酬改定では「過去1年間に…」という年間ベースの実績が求められていたが、令和8年度診療報酬改定では直近1か月を基準とした要件に変更された。

(歯援診1の施設基準「ア」項目 記述簡略版)

在宅療養支援歯科診療所1の施設基準(実績要件の選択肢)

・直近1か月に歯科訪問診療1~3を合計10回以上算定していること。

・直近1か月に歯科訪問診療2~5を5回以上算定し、そのうち20分以上の歯科訪問診療を算定した回数が6割以上であること。

・直近1か月に訪問口腔リハ、小訪問口腔リハを合計5回以上算定していること。

・研修歯科医を受け入れ、歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設であること。

単に回数をクリアするだけではなく、診療所の特性(頻度やリハビリ重視、教育機関など)に合わせた多様なアプローチで基準を満たせるようになっています。

参考:

特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号)
※「歯援診」については、109~111ページに記載。

※届出される際は、その他通知や疑義解釈等も併せてご確認ください。

② 歯援診2にも臨床研修施設の選択肢が追加

→歯援診2の実績要件についても、従来の「過去1年間に合計4回以上算定」という基準に加え、「研修歯科医を受け入れており、当該研修歯科医に対して歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設であること」という選択肢が新設されました。

③ 連携実績要件の整理・統合と点数の見直し

→令和6年度改定における「ク」複数の連携実績要件(旧クの項目など)が整理・統合されました。これに伴い、算定実績のない「退院前在宅療養指導管理料」が要件から削除され、新たに「医科連携訪問加算」などが追加されるなど、より実態に即した評価へと見直されています。

2. 「歯援診」を取得・維持するメリット(算定上の優遇)

「歯援診」の施設基準を満たして届出を行う最大のメリットは、在宅歯科医療における診療報酬(点数)が手厚く評価される点にあります。これにより、質の高い訪問診療体制を維持しながら、医院経営の安定化を図ることができます。一般の保険医療機関(それ以外)と比較した主な優遇措置は以下の通りです。

算定項目・加算名 歯援診1 歯援診2 それ以外
退院時共同指導料1 900点 900点 500点
歯科訪問診療補助加算
(同一建物居住者以外/同一建物)
+115点 / +50点 +115点 / +50点 +90点 / +30点
在宅療養支援歯科診療所加算
※歯科訪問診療1に限る
+100点
(加算1)
+50点
(加算2)
対象外
通信画像情報活用加算
※歯科訪問診療1~3に限る
+30点 +30点 対象外
歯科疾患在宅療養管理料 340点 230点 200点
在宅患者訪問口腔リハ指導管理料加算
※小児も同様/口管強加算との併算定不可
+145点
(加算1)
+80点
(加算2)
対象外

このように、「歯援診1」や「歯援診2」の基準をクリアしていることで、基本の管理料や訪問時の各種加算が大幅に増点されます。特に、退院直後の地域連携(退院時共同指導料1)や、在宅での積極的な口腔リハビリテーション(訪問口腔リハ加算)において、その評価の差は顕著です。地域包括ケアシステムの中で中心的な役割を果たす歯科医院として、これらの算定メリットは体制を維持するための大きな原動力となります。


参考:

診療報酬の算定方法の一部を改正する件(歯科点数表)」(令和8年厚生労働省告示第69号)
※「退院時共同指導料1」については、30~31ページに記載。
※「歯科訪問診療料」については、32
~35ページに記載。
※「歯科疾患在宅療養管理料」については、36~37に記載。
※「在宅患者口腔リハビリテーション指導管理料」については、37~38ページに記載。
※「小児在宅患者口腔リハビリテーション指導管理料」については、38~39ページに記載。

※届出される際は、その他通知や疑義解釈等も併せてご確認ください。

3. 届出要件をみてみよう!

令和8年度診療報酬改定の内容が反映された「歯援診」の施設基準をみていきます。(変更・新設箇所を赤字で記載、経過措置に関わる箇所を青字で記載しています。)

(1) 在宅療養支援歯科診療所1(歯援診1)の施設基準

以下のいずれかに該当すること。【直近1か月ベースへ変更(大幅変更)】
(イ)直近1か月に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療料3を合計10回以上算定していること。
(ロ)直近1か月に歯科訪問診療2から5までのいずれかを算定した回数が5回以上であり、そのうち20分以上の歯科訪問診療を算定した回数の割合が6割以上であること。
(ハ)直近1か月に在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料又は小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を合計5回以上算定していること。
(ニ)研修歯科医を受け入れており、当該研修歯科医に対して歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設であること。
高齢者の心身の特性(認知症に関する内容を含むものであること。)、口腔機能の管理、緊急時対応等に係る適切な研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。
歯科衛生士が配置されていること。
当該診療所において、歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な保険医をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。
歯科訪問診療に係る後方支援の機能を有する別の保険医療機関との連携体制が確保されていること。
当該診療所において、過去1年間の在宅医療を担う他の保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療料の算定回数の実績が5回以上であること。
以下のいずれかに該当すること。
(イ)当該地域において、地域ケア会議、在宅医療・介護に関するサービス担当者会議又は病院・診療所・介護保険施設等が実施する多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。
(ロ)過去1年間に、病院・診療所・介護保険施設等の職員への口腔管理に関する技術的助言や研修等の実施又は口腔管理への協力を行っていること。
(ハ)歯科訪問診療に関する他の歯科医療機関との連携実績が年1回以上あること。
(ニ)過去1年間に在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(1から3までに限る。)、退院時共同指導料1、医科連携訪問加算、在宅歯科医療連携加算1、在宅歯科医療連携加算2、小児在宅歯科医療連携加算1、小児在宅歯科医療連携加算2、在宅歯科医療情報連携加算、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料の算定件数が1回以上であること。【旧クの要件を統合・一部見直し】
直近1か月に歯科訪問診療及び外来で歯科診療を行った患者のうち、歯科訪問診療を行った患者数の割合が9割5分以上の診療所にあっては、次のいずれにも該当するものであること。
(イ)過去1年間に、5か所以上の保険医療機関から初診患者の診療情報提供を受けていること。
(ロ)直近3か月に当該診療所で行われた歯科訪問診療のうち、6割以上が歯科訪問診療1を算定していること。
(ハ)在宅歯科医療に係る3年以上の経験を有する歯科医師が勤務していること。
(ニ)歯科用ポータブルユニット、歯科用ポータブルバキューム及び歯科用ポータブルレントゲンを有していること。
(ホ)歯科訪問診療において、過去1年間の診療実績(歯科点数表に掲げるもののうち、次に掲げるものの算定実績をいう。)が次の要件のいずれにも該当していること。

①「I005」に掲げる抜髄及び「I006」に掲げる感染根管処置の算定実績が合わせて20回以上であること。
②「J000」に掲げる抜歯手術の算定実績が20回以上であること。
③「M018」に掲げる有床義歯を新製した回数、「M029」に掲げる有床義歯修理及び「M030」に掲げる有床義歯内面適合法の算定実績が合わせて40回以上であること。ただし、それぞれの算定実績は5回以上であること。

(2) 在宅療養支援歯科診療所2(歯援診2)の施設基準

以下のいずれかに該当すること。
(イ)過去1年間に歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療3を合計4回以上算定していること。
(ロ)研修歯科医を受け入れており、当該研修歯科医に対して歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設であること。【新設】
(1)のイからオまで及びクのいずれにも該当すること。
※(1)とは、上記「歯援診1」のこと。
当該診療所において、過去1年間の在宅医療を担う他の保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所又は介護保険施設等からの依頼による歯科訪問診療料の算定回数の実績が3回以上であること。

(3) 経過措置および届出に関する事項 (※記述簡略版)

  令和9年5月31日までの間、1の(1)のキの(ニ)の規定の適用については、改定前の規定による令和8年5月31日以前の各区分の算定回数及び改正後の規定による令和8年6月1日以降の各区分の算定回数を合計して差し支えない。
在宅療養支援歯科診療所1及び在宅療養支援歯科診療所2の施設基準に係る届出は、別添2の様式18を用いること。
【重要・経過措置】令和8年3月31日時点で改正前の施設基準に係る届出を行っている保険医療機関については、令和9年5月31日までの間に限り、1の(1)のア及び1の(2)のアの基準(新しい実績要件)を満たしているものとする。

参考:

特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第8号,令和8年3月5日)
※「歯援診」については、109~111ページに記載。

※届出される際は、その他通知や疑義解釈等も併せてご確認ください。

4. これから準備することは?

今回の改定において、最も注意しなければならないのが「既に届出を済ませている医院(既届出医院)」への影響です。

■ 既に「歯援診」を届け出ている医院(既届出)※届出の再提出は不要!

今回の改定では、既に(令和8年3月31日時点で)届出を行っている保険医療機関に対して令和9年5月31日までの経過措置(猶予期間)が設けられています。猶予期間があるとはいえ、令和9年6月1日以降も施設基準を維持するためには、新しい実績要件をクリアしている必要があります。現在の訪問診療の頻度や体制を見直し、新基準に適合できるよう計画的な準備を進めましょう。

■ これから「歯援診」を届け出る医院(新規届出)

新規で届出を行う場合は、令和8年度改定に対応した最新の要件(歯援診1なら直近1か月の実績など)を満たしている必要があります。届出の際は、令和8年度診療報酬改定に対応した届出様式をご準備ください。

各厚生局「歯援診」届出様式 ダウンロード

まとめ

  • 「歯援診」の施設基準は、実績要件を中心に大幅な見直し。
    →年間ベースの実績から「直近1か月10回以上」などの月間ベースへ変更され、さらに選択肢が多様化しました。
  • 既届出の医院も対応が必須!
    →令和9年5月31日の経過措置期間中に、新基準を満たせる訪問診療体制への強化・維持を進めましょう。
  • 新規届出の際は、令和8年度診療報酬改定版の「様式18」のご準備を!
    →令和6年度診療報酬改定版の様式からフォーマットが大きく変更されています。注意が必要です。
  • 在宅医療のニーズがますます高まる中、「歯援診」の維持・新規取得は、地域における歯科医院の役割をさらに強固なものにします。施行に合わせたシミュレーションと早めの体制整備を進めていきましょう。(届出や算定にあたっては、その他通知や疑義解釈等も併せてご確認ください。)

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