【セミナーレポート】歯科診療が困難な子どもの理解と対応(第1回 概要編)
セミナーレポート
2025/07/02
「子どもの歯科診療で、泣いたり暴れたりして治療がうまくいかない」「発達障害児や知的障害児など、障がいを持つお子さんへの対応に悩んでいる」。歯科医療従事者なら誰しも一度は直面する、小児歯科における共通の課題です。特に、感覚過敏や歯科治療への強い恐怖(歯科恐怖症)が背景にある場合、従来の対応では限界を感じることも少なくありません。
本記事では、こうした歯科診療が困難な子どもたちの真の理由を理解し、無理なく治療を成功させるためのヒントが満載のセミナー「歯科診療が困難な子どもの理解と対応 第1回 概要編」をレポートします。
講師:石倉行男先生
医療法人発達歯科会
おがた小児歯科医院 理事長・院長
【資格・役職】
・日本障害者歯科学会(専門医指導医、専門医、認定医指導医、認定医)
・日本小児歯科学会 専門医
・日本歯科麻酔学会 登録医
・学校医:生の松原特別支援学校
・非常勤講師(鹿児島大学歯学部、九州歯科大学、福岡歯科衛生専門学校)
・日本障害者歯科学会 代議員、同 専門医委員会 委員
なぜ今、このテーマが重要なのか?
・不適応行動の背景
子どもの歯科診療において、「不適応行動」は多くの医療従事者が直面する共通の課題です。不適応行動とは、診療をスムーズに行うために望ましくない行動全般を指し、泣く、暴れる、口を開けないなど、その内容は多岐にわたります。
このような行動の背景には、主に以下の3つの要因が考えられます。
- ✓ 身体的要因:
痛み、不快感、感覚過敏など - ✓ 精神的・発達的要因:
不安、恐怖、理解力の低さ、コミュニケーションの難しさなど - ✓ 環境的要因:
医療機関の雰囲気、過去のトラウマ、保護者の不安など
これらは単独で生じるだけでなく、互いに複雑に絡み合っています。不適応行動を単なる「わがまま」として捉えるのではなく、その背景にある真の理由を理解することが、適切な対応の第一歩となります。
困難な子どもへの対応の全体像
・適切なフローと考え方

セミナーでは、不適応行動を示す子どもへの対応は、闇雲に行うのではなく、体系的なフローに沿って進めることの重要性が強調されました。
1. 困難な理由の把握と分類(障害児・歯科恐怖症 などの理解へ)
まずは、なぜこの子どもが診療を困難に感じているのか、その理由を丁寧に探ります。セミナーでは、歯科診療が困難な子どもたちを、以下の4つのタイプに分類して考える方法が紹介されました。
✓ 知的障害児:
知的機能と適応機能の遅れがあり、コミュニケーションや理解が難しい。
✓ 発達障害児:
ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)などがあり、独特の感覚特性や集中力の持続が困難な場合がある。
✓ 幼少非協力児:
年齢が幼く、未発達なため、状況の理解や協調的な行動が難しい。もしくはグレーゾーンの子ども。
✓ 肢体不自由児:
身体的な制約があり、診療姿勢の保持や口の開閉が困難。
この分類は、子ども一人ひとりの特性を理解し、その後の対応方針を立てる上で非常に有効です。
2. 対応方針の決定と実践(行動療法から鎮静・全身麻酔まで)
理由を把握した上で、どの対応が最も効果的かを見極めます。対応の選択肢は大きく分けて以下の3つです。
- ✓ 行動療法:
基本的なコミュニケーションや声かけ、環境調整を通じて、自発的な協力を促す。 - ✓ 薬理学的鎮静法:
行動調整が難しい場合に、薬物を用いて不安や恐怖を和らげ、安全に診療を行う。 - ✓ 全身麻酔:
鎮静法でも対応困難な場合や、侵襲の大きな治療が必要な場合に選択される。
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行動療法の基礎
・信頼関係を築く技術

これらの対応の中でも、最も基本となるのが行動療法です。これは、すべての歯科医療従事者が身につけるべき重要なスキルです。セミナーでは、その基本的な原則として「Tell–Show–Do」が紹介されました。
Tell(伝える):次に何をするのか、簡単な言葉で伝えます。
Show(見せる):実際に使う器具や道具を見せ、安全であることを示します。
Do(行う):実際に診療を行います。
このシンプルなステップを踏むことで、子どもは「これから何が起きるか」を予測できるようになり、不安や恐怖が軽減されます。
また、「スモールステップ」も行動療法の重要な要素です。いきなり大きな治療を行うのではなく、まずは口を開けてもらう、ミラーを口の中に入れるなど、小さな目標を設定し、成功体験を積み重ねていくことで、徐々に協調性を引き出します。
今後の見どころ
・各論編へのブリッジ
今回の「概要編」は、今後のシリーズを通して学ぶべき知識の土台を築くものでした。第2回以降は、今回の分類に基づき、各論を深掘りしていきます。
- 第2回 知的障害児編:
知的障害の概要、グレーゾーンとは、対応のポイント、行動調整、症例 - 第3回 発達障害児編:
発達障害の概要、グレーゾーンとは、対応のポイント、行動調整、症例 - 第4回 幼少非協力児編:
幼少非協力児・歯科治療恐怖症児の概要、定型発達を知る、対応のポイント、行動調整、症例 - 第5回 肢体不自由児編:
脳性麻痺の概要、医療的ケア児の概要、対応のポイント、行動調整、症例 - 第6回 マインド編:
診療に臨むうえで大切にしたい、要となる“マインド”について
※第2回以降は有料となります
各回で、より実践的な症例や具体的な対応策が紹介されるため、明日からの臨床にすぐに活かせる知識が満載です。
まとめ
・すべての患者(障害児や歯科恐怖症 など)に寄り添うために

歯科診療が困難な子ども――発達障害児や知的障害児、そして歯科恐怖症を持つお子さんへの理解と対応は、日常診療の質を高める上で欠かせません。
彼らの不適応行動の背景には、身体的・精神的・環境的な多様な要因があり、それを正しく理解することが診療成功の第一歩となります。
本記事で触れたのはその入り口にすぎません。
石倉行男先生のセミナーでは、障がいの特性や歯科恐怖症の克服方法などを、豊富な症例とともに具体的に解説しています。
行動調整のステップや信頼関係の築き方、薬理的アプローチまで、臨床ですぐに役立つ知識が詰まっています。
「第1回:概要編」は無料でご覧いただけます(配信期間は無期限)。 ぜひご視聴ください。
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